今日は1ヶ月ぶりの診察だ。
――人生を変えるような出来事は、思いがけないタイミングで現れる。
それがまさか自分自身に、まさに人生を変える程と思えた衝撃は、もう無い。
忘れてしまった。
顎やスネのかさぶたは消えたし、手の痛みもいつの間にか消えていた。
握力はまだ9割程だが、日常生活に支障はない。
反面、左手と小指の性能は2割増しでアップした。
見た目には9月以前と全く変わらなくなった。
ランニングを再開した。
軽快に走り出したのだが、一周1キロ、3周で一杯一杯になった。
以前は5キロくらいは何ともなく走れたのに。
それまで2年以上走り続けていたのに、2ヶ月休んだだけでここまで落ちるのか。
…改めて思う。
継続していることは、評価できない。
評価は結果でのみ、あらわれるのだ。
それは走り終えた時。
肺や脚が続かなくなって、スピードを緩めた時。
いつだってネガティブなタイミングで現れるのだ。
過程に、ましてや過去に意味はない。
そして2年の貯金が2ヶ月で尽きるように、これから20年続ければ2年分の走りなど取るに足らないものになるだろう。
――そう、今夜も走り出すのだ。
病院に行ったことで気分的に大きく安心した。
毎食、薬を飲んでいると、治療している気持ちになるのだ。
病は気からというが、こういう状況にならないとなかなか分からない。
まだプルタブは無理だが、ペッドボトルの蓋は開けられるようになった。
動かした方がいいのか、安静にしていた方が良いのか分からなかったので、診察で医者に聞いた。
医者「リハビリ出すのにもお金がかかるんだけど」
俺「……」
最後までお金のことを心配された理由は不明だ。
医者「テニスボールみたいなのを握ったり放したりして下さい」
俺「(えっそれだけ…)」
昼間寝ていたので、夜はなかなか眠れない。
深夜テレビで、おねがいマスカットという番組がやっていた。
以前も言ったが、テレビ番組に出てるAV女優は、5割増しで可愛く見える。
すぐさまDVDを借りに行きたくなる。
性欲が回復したというのは、体調も回復してきたということだろう。
思いっきり笑って気分もポジティブに…。
いや、スカッとしました。
医者「画像上で首の損傷は見られませんね」
との言葉にホッとする。
それなら痛みの原因は何かと言うと、
「転倒した際、頸椎が脳震とうのような状態になり、痺れているのでしょう」
確かにコンクリートにしこたま顎をぶつけたらしく、まだ傷が残っている。
(失神していたので、ぶつけた記憶は無い)
膝下も怪我をして大きなかさぶたになっている。
手の痛みの方が酷かったから、どちらもすっかり意識の外だった。
人間の苦痛や不幸というものは、程度ではなく、比較によって感じるようだ。
「どれぐらいで治りますか?」
医者が言わないのには理由があるのだろうが、あえて踏み込んでみた。
「一ヶ月ぐらいですか? それとも半年、一年」
答えは半ば予想通りだった。
「半年かかるかもしれませんし、ひょっとしたら明日治るかもしれません」
真実を隠しているのか、それとも本当に分からないのだろうか。
なお食い下がろうとする俺に、
「何とも言えません。時間はかかるかもしれませんが『気が付いたら治ってた』、そんな感じだと思いますよ」
…なるほど、そんなものかもしれない。
求めていた答ではなかったが、これ以上質問は無かった。
「それにしても」もう一度医者がMRI画像を見て言う。
「骨格が弱いですねえ」
えっ。
「肩こりとか酷いでしょう? 慢性的に悩まされるでしょう」
遺伝的に?
筋肉とかじゃなくて骨格の問題?
自分でもずっと知らなかった自分の欠点を指摘される。
最後に言われたこれまた対処不可能な一言に、何よりのショックを受けた。
今回は整形外科に受診していた。
改めて状況を説明する。
どうやら一週間前、受診した時の電子カルテは、読んでいないようだ。
同じ病院なのだから、連携ぐらい取れていて欲しい。
CT画像や採血の結果も見ていないようなので、自分から話す。
というより興味が無さそうだった。
科が違うからだろうか…。
MRIの検査をすることになった。
頸椎の損傷は2週間ぐらい経たないと、MRIで出ないらしい。
医者「高いけど大丈夫?」
と言われたが、心配された理由が分からなかった。
払えなそうに見えたのか…。
検査室に行って、20分ほど狭い筒状の装置に入る。
音で調べているらしく、予想以上に大きな音がした。
検査の際はヘッドホンをする。
「3分づつ6回行いますが、その間、唾とか飲み込まないようにして下さいね」
と言われる。
「……」
言われると気になる。
「うっ…」
我慢していたが、どうしようもなくなって、途中何度か嚥下してしまった。
というより、喉が勝手に反応するのだ。
「失敗したのでもう一度やり直します」と言われないか、ビクビクしていたが、何とか検査は終わった。
コツは「何も考えないようにすること」だと知ったが、何度も受けたくはない。
暗い文章を書いていたら、暗くなるらしい。
改めて影響されやすい自分に気付く。
ということは暗いブログを読んで、暗くなる人もいるかもしれない。
それは全く本意ではない。
…何とかせねば。
改めて健康でいるのは大事だと思った。
言葉にすると実に陳腐だけれど、ここ数ヶ月の間に強く実感した。
体が元気ではないと、心まで元気が無くなる。
いわゆる闘病記というのは、どうやってこの沈鬱した雰囲気を解消させているのだろう?
分からない…。
ということで、あとしばらくですが、この話も続きます。
