今、独り。
車。
…一体、何故って?
ことの次第はこうだ。
イマラ「次、何処行く?」
そががが「俺、絶対京都」
(↑マジ)
イラマ「私は神戸か、UFJ行きたいなー」
花火師「いいねぇUFJ!」
お前ら、つっこむやついないのか?
いや、つっこむって言ってもエロい意味じゃなくてさ。
UFJじゃ銀行だろ…まぁついでにお金おろしてきてもいいけどさ。
そしてわざわざGWに、USJって有り得ないだろ?
これだから三流大学のやつらは困る。
俺も気を使って、二浪で明治って言っといたけどさ。
イラマ「私もUSJ行ってみたいな」
おいおい、ここは2ー2に分かれて、セクシーチャンスだろ?
空気読めよ!
イマラ「じゃあ私が、一緒に京都行くよ」
おいおい、お前が空気読むなよっ!
…というのも、2人だと、こんなやりとりが予期されたからだ。
イマラ「私たちって…付き合ってるってことなのかな?」
……。
そががが「えっ、何言ってるの?」
…言えねぇ!
人には散々言えって言っといて、絶対言えねぇ…。
いや、そもそも断る理由は無いんだけどさ。
俺、次の彼女はモデルって公言しちゃってるけど、別にいいよね…?
…で、結局やつらとは一時別れ、冒頭の事態になっている訳だ。
俺は一人、京都を回ってさ、一体何したかったんだろうね?
…3Pだろうね。
それで合流したら、何でお前らいい感じになってるんだよ…花火師とイマラ。
イマラ、お前俺に気があったんじゃないのか?
…いや、まぁいい。
花火師イイヤツだしさ。
それよりお前ら、何で現役で一橋行ってること、先に言ってくれなかったの?
俺、わざわざ気を使って合わせて、めちゃくちゃ恥かいたじゃん…。
ま、いいけどさ。
(完?)
今はGWの真っ最中。
30分前のやりとりを思い出す。
「じゃあ何処いくー?」
ノリノリなのは、一昨日の晩、突然電話して来たイラマ女。
あの後、マキと何となく気まずかった。
…とはいえ、このBMは、コイツの家の車だから何も言えない。
「あたし大阪行きたいなぁ!」
と、イマラ女。
手がベタベタしてたやつだ。
明るい所で会うと、想像以上に若い。
その上セクシー。
歩く矛盾だ。
…本当に、この子だったっけ?
「あぁ、いいねーいいねー!」
調子よく相槌を打ったのは、打ち上げ花火で大層はしゃいでいた男。
…って、バカか!?
GWの真っ最中に、大阪とか有り得ないだろ…?
世間の常識っていうやつを知らんのか。
イマラの冗談に、打ち上げ野郎も乗るなよ。
イラマ「よしっ、決定ね♪」
…いいのか?
俺、知らないぞ。
あとお前ら、ちゃんと金持ってきてるんだよな?
俺は色んなセクシーイベントに備えて、多少持ってきたけど。
とりあえず新横浜まで出て、新幹線に乗ろうと車を走らせる。
やはり高級車は快適だ。
………。
……。
…。
そががが「って、名古屋まで来ちゃったよ!?」
快適過ぎて、つい東名を飛ばしてしまった。
渋滞とかしてないのか…?
結局、そこから新幹線に乗るのも何なので、東名阪で一気に大阪へ。
打ち上げ「運転大変でしょうから、俺が出しますよ」
行きの高速代は、打ち上げ男が全部出すと言う。
こいつ、結構イイヤツだな…。
(↑単純)
道中は和気あいあい。
予期していたエロチックでスパイシーな雰囲気など、全く無い。
本当にこいつら、土曜に色々あったやつらなのか…?
イラマ「免許持ってる人いて良かった〜。運転も意外と上手いし」
そうだろ、この平成生まれども。
(↑衝撃)
意外とは余計だけどな。
セックスの上手さと運転は比例するんだ。
そしてお前は今宵、俺の夜のドライビングテクニックも味わうことになるんだぜ。
今夜は俺のシフトレバー、幻の7速入れちゃうよ?
(次回、最終話「運命の二択」に続く)
火曜日の夜。
久しぶりにマキとご飯を食べていたら、知らない番号から着信があった。
そががが「…もしもし?」
「私、分かる?」
いや、全く分からない…けど、何となく予想はつく。
そががが「何で俺の番号を?」
「名刺置いてったでしょ」
名刺?
そんなの持った事もないが。
「その番号に掛けたら、違う人が出て」
そががが「違う人…?」
そういや先週の土曜友人と飲んで、確かそいつに名刺を貰った。
どうやらそがががは、その名刺を渡していったらしい…。
「何か全然噛み合わないから。話し聞いたら、どうやらあんたじゃないかって。この番号教えてくれて」
そががが「あはははは…」
ビンゴ―!
…ていうかソイツも一言俺に言ってくれよ。
(↑自分が勝手に名刺を渡したことは忘れている)
そががが「で、誰だっけ? いや、名前言われても分からないし、じゅ…順番っていうか」
名刺を渡したとなると、きっと一緒にトイレに行ったどちらかだろう。
イマラの方かイラマの方だ。
…結果、どうやらイラマチオだと教えてくれた女だということが分かった。
逃した魚の方だ。
そががが「で、何? 俺、今知り合いといるからさ」
チラチラっと横目で伺う。
マキはずっと無言。
…というより無視。
焼き餅を焼くキャラではないが、ひねくれられると厄介だ。
そして女は唐突にこう言った。
「アンタ免許持ってる? GWどうせ暇でしょ」
(次回「GWの奇跡」に続く)
知人と飲んでいたのだが、早めにお開きになり家に帰った。
シャワーを浴びたところで、珍しく麻雀もなく何となく暇になり、小腹が空いたが時間が時間だったので外に食べに出ることにした。
自転車で駅に向かう。
既にてっぺんを回っており、営業中はラーメン屋ぐらいだった。
胃がもたれていたが、いつものように背油ダブルを頼んで、ライスも付ける。
食券を買ったところで、ライスは切れていて炊きあがりまでに40分かかるという。
ラーメンだけ食べて店を出る。
お腹もいっぱいになっていたし、多少もたれていたし、酔ってもいたので、夜風にあたろうと多摩川へ向かった。
風を切って漕いでいくのは気持ちいい。
途中、目的地の二子橋周辺に、無数のランプが点灯しているのが見えた。
パトカーか?
PTO(ピーティーオー)か?
いや、そんなことない護岸工事だろう。
夜間にありがちだ。
更に近寄ると、はっきりとパトカーランプだった。
何か事件でもあったのだろうか?
いや、あったのだ。
さもなくば数十台も止まっているはずがない。
どうする、川涼みはやめとくか?
どう見てもトラブルのサインだろう。
自殺か、水死か、暴走族の抗争か、その他凶悪犯罪か。
…いずれにせよ真っ当なことはないだろう。
橋の手前まで来ると、警官隊が何かを捜索しているようだ。
ゆっくり河辺で涼むのは無理そうだった。
加えて橋の下では、若い男女がテンション高く騒いでいる。
どこかのサークルだろうか?
50人近くはいるだろう。
声の量でそう思った。
既に電車も無くなっている時間だ。
どうするんだ、朝まで騒ぐのだろうか、テントとか持って――そんな事を微塵も考えず、橋を渡った。
対岸の東京側には若者も警官の姿も無いし、静かそうだったからだ。
足元も危うい真っ暗な河原沿いをしばらく歩いて、夜露も気にせず草の上に横になる。
星は…見えない。
二、三年前は無数に見えた気がするけれど、目が悪くなったのか、曇っているだけなのか。
とにかく星は一つも見えない、それにしても見えなさ過ぎる。
そんな風に他愛のないことを考えていると、
「すみませんがー」
愛想の良さそうな、それでいて無遠慮な声。
懐中電灯を持った制服姿の男だ。
「今何されてるんですかー?」
…何って。
別に何もしていなかったし、見れば分かるだろうと思ったが、明らかに職務質問だし、面倒なことになるのは避けたい。
重要参考人として任意で連行されて、この時間妹に迎えにきてもらうのも避けたい。
ということで素直に答えて、免許証まで見せて、世間話もした。
何の捜索してるんですか――いや、捜査に関わることなんですみません、などといった推理ものにありがちな問答だけは避けた。
すっかり水を差された感じになり、自転車を起こし帰ることにする。
橋を渡り終えたところで、喉が乾いたのでコンビニに寄った。
店内には先程橋の下にいた若者たちだろうか、トイレ待ちの女子が数人。
ヘルシア緑茶を手に取ったところで、
「健康気にしてるんですか?」
と唐突に声を掛けられる。
「いや、別に、まぁ」
どちらでもない返答をする。
それ、この前ニュースで――いや、あれは愉快犯がやったことで…などというありがちな問答を予想していると、
「これから一緒に飲みませんか」
と、もう一人の赤顔の女が言った。
不意を突いた質問に俺は、
「はい、是非とも」
と言って、手にあったヘルシアを捨てて、ビールパック6本入りを取る。
その様子が可笑しかったのか、女たちは心底愉快そうに笑っている。
「ゼロ選んでますよ。やっぱ健康気にしてるんですかぁ」
顔の赤くない方の女の、今度こそ完全に不意を突いた質問に、俺は沸騰した。
ちなみに顔が赤いのは、別に照れているのでなく、酒を飲んでいるのだということは分かった。
「いや、別に、まぁ」
と俺は、またしても不甲斐ない返答をして、女たちはクスクス笑い、俺はレジに並ぶ。
つまみなども買ってみる。
女のトイレを待って、河原に行くことになった。
女たちはサークルの集まりで来ているようだが、普段はあまり活動してないように言う。
ウインターサークルだろうか?
まぁそんな事はその日の俺は全く気にせず、彼女たちの仲間を紹介される。
(今思えば、大学の新歓コンパだったのだろう)
男二人に女二人。
あとは彼女たちで一応六人のグループのようだ。
橋の上からは50人が一丸に見えたが、実際は小惑星が集まって銀河を形成しているように…いや、ここで喩える理由は無い。
男の一人は完全に泥酔して、寝ている。
ピクリとも動かない。
死んでいるのじゃないのだろうか。
買ってきたゼロカロリービールを片手に、彼女たちから花火を手渡された。
両手に持って、アイシテルのサインをやり続けてみる。
キスぐらいは出来るんじゃないかと。
しかし、伝わらない以前にビールが零れる。
今度は男が、何処からか持ってきた打ち上げ花火を始め出した。
キャアキャアと女たちは楽しそうに声を上げていたが、俺は一人、死んでいる男のことを狙い続けた。
三発目で男は飛び上がり吐いた。
どうやら生きていたらしい。
良かった。
一本目も飲み終わらないうちに、俺が重点的にサインを送っていた女がトイレに行きたいと言い出した。
コンビニは混んでいたし、往復にも時間がかかるので、「草むらでしてくれば」と男が言った。
女は戸惑っていたが、俺が付いていってやると言うと、頷いた。
草はうっそうと生い茂っていて、背丈ほどもあったので、念のため手を繋いでみる。
女の手はベタベタしていて気持ち悪かった。
俺の手もビールや草や花火やラーメンで汚れていただろうから、おあいこだろう。
彼女が用を足している最中は、少し離れたところで背を向けていた。
ナイトである。
用が済んだようで、戻ってきた女の胸を掴んでみた。
ナイトである。
(夜の方の)
女はあぁと息を漏らし、中腰になった俺の膝上に乗った。
彼女は濡れていたようだが、小用の後だし…それはもちろん言わずに、避妊具が無いからと言って、口でしてもらう。
女の献身的な手つきも次第に煩わしくなってきて、彼女の頭を持って自ら動かし始めた。
女が時々えづいて涙目になるたびに、射精感はやや下がった。
酒を飲んでいるし、戻す可能性も高い。
吐かれたら駄目だ。
これはヴィンテージジーンズだ、洗えないんだ。
それでも野外ということもあるのか、お陰様で何とか射精し、皆のもとに戻る。
すぐにまた別の女がトイレに行きたいと言い出した。
それなら一緒に来いよ――何なら3Pだって…と、後者の方はもちろん心の中だけで言った。
女は、
「20分以上待ってたんだから」
「えっ、あっ、そう?」
確かに言う通りだった。
俺はその女と共に、また草むらに向かうことになった。
そして今度は顔射をやってみたいなと思いながら歩いた。
しかし女は暗がりを怖がったのか、用を足せなかったようですぐに戻ってきた。
俺は女の腰に手を回す。
どけられる。
「えっ…何で?」
「そういうのじゃないの」
そういうのじゃないって、どういうのだ。
こんな暗がりまで来て。
俺はナイトだぞ。
「さっき、彼女ともしちゃったんでしょう?」
何だ、そんな事を気にしてるのか。
「いやいや、イマラチオしてもらっただけだよ」
「イマラ…?」
「そう口で…こうやって頭を動かして」
「それなら、イラマチオでしょ」
女は呆れ顔で言う。
これだから学歴の無いやつは困る。
イ…マ…ラ…あれ、スペルってどう書くんだっけ。
「家に帰って調べてみなよ」
…それはこっちが言いたい。
そんなこんなで結局その女とは何もないまま、橋の下に戻る。
俺はまだハシャいでいる男から打ち上げ花火を奪って、死んでいる男目掛けた。
眼鏡がぶっ飛んだが、良かったやはり生きているようだ。
俺はその事に心底安堵して、自転車に乗って帰った。
帰り道、やはりやれなかった女のことが惜しくなってきた。
しかし逃がした魚は何とかだろうと頭から追い出す。
そして家に帰って、インテリジェントの塊である、日本語大辞典を引いてみたら、何と正式には「イラマチオ」だったのには大層驚かされて、眠れず、妹はまだ起きていたが、先刻あったことはやはり誰にも話せず、結局寝た。
「コドク?」
無機質なカレの言葉を繰り返す。
漢字に直すと「孤独」だろうが、聞こえてきた三つの音には、そんな意味は感じられなかった。
「あぁ誰もいないとき、一人になってしまったとき、いつでもボクはその人の側にいる」
それもまた矛盾した言葉だった。
けれども不思議と説得力を持って心に伝わった。
何よりこの部屋に私は一人きりの筈なのに、カレの存在は確かに感じられている。
「一つだけ、注意することがある」
カレは牽制するように言った。
「決して振り返ってはいけない」
「どうして?」
カレの言葉とは反対に、私はもう少しで振り返ってしまいそうだった。
それ程までに、カレに対して興味を惹かれていた。
「……姿を見ると、呪われてしまうから」
温度のない言葉。
カレがどのような表情で言ったのかは分からない。
カレの顔が見えないから。
けれど実に悲しい言葉だった。
私は何が悲しくて今まで泣いていたのかさえ、気が付くともう忘れてしまっていた。
けれど、せっかく一人きりではなくなったというのに、その姿を見ることが出来ないなんて。
確かに背中に存在を感じているというのに。
「僕は人々には忌み嫌われる存在なんだ。
誰だって独りになんてなりたくないだろう?
だから僕の姿は絶対に見てはいけない。
見るときっと心が囚われてしまう」
抜け出せなくなってしまうと、カレは呟くように言った。
「見えるか見えないかじゃない」
カレは口を開く。
黙ったままの私に語りかける。
「……見るか見ないかなんだ。
言い換えると、見ようと思うか思わないか。
つまり心の問題さ」
「姿を見なくても、僕の存在を見つけてくれさえすれば、僕はいつだって君の側にいる。
いつだってね」
それなら、と私は思った。
太陽を直視しなくても、その温かさや恩恵は感じられるように。
確かにカレの存在は、すぐ近くに感じられた。
今ではその息遣いや鼓動さえも感じられていた。
見えなくても触れなくても、確かに分かった。
分かるものがあると気付いた。
私はそれを見るために、そっと目を閉じた。
(了)
