木村と露崎は、予定通り智佐の尾行に戻ってもらっている。
信号が変わると、ネズミ色のコートを着た変な髪型の、見るからに怪しい男が近
づいてきた。
「ご苦労さん」
曽我はクスッと笑って声を掛ける。
「はぁ……もう勘弁して下さい。危うく通報されそうになりましたよ……」
男はウイッグを外しながら、ヘトヘトになった顔を見せる。
「周りの人に追いかけられたんで、慌てて改札に逃げ込んで、撒いてきました
よ。はぁ……とりあえずSuica持ってて良かったです」
中里の口調は冗談とも本気とも付かなかった。
額から汗が流れているのは、カツラのせいか、それとも激走のせいか。
「いやーグッジョブだ。そしてとりあえずそのコートは、ゴミ箱に捨てろ」
「えっ? な、何でですか!?」
中里は脈絡のない言葉に目を丸くする。
「松ちゃんが新しいコート買ってくれるってよ。確かに、これが元でチーちゃん
に殺られたら、目も当てられん」
曽我は苦笑する。
「やられ、る?」
疑問顔の中里を連れて、曽我は高島屋の中へ入っていった。
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