アクセス解析 カウンター SEO ドリーム愛ランド 「僕の彼女は甲殻類」[2]
ドリーム愛ランド
日々の出来事を日記に書いていきます。
「僕の彼女は甲殻類」[2]
[2]

半身、寝袋に包まれたままの中里亮という男。

そしてテーブルを挟んだ向かいに、蛯原友里と名乗る細身の女性が立っている。

部屋にあるのは、そのテーブルとソファと電話と、彼女が掴んでいる電気スタンドだけだ。

中里は口を開く。

「怪しい者じゃないし、いい加減、その電気スタンドを離したら?」

「いや、めっちゃくちゃ怪しいし!」

警戒を解く様子は全く無さそうだった。

中里はため息を付きながら言う。

「だからさっきから説明してるだろ? 俺はとある事情があって、とある国から日本に帰ってきて、とある事情で住む所が無いから、ばぁちゃんに家を貸して貰ったって」

「全然説明になってないし!」

「だからそれも詳しくは話せないんだって……とある事情で」

中里は口をへの字にして言う。

「とあるばっかりじゃないっ。大体、ここはあたしが借りてる家なの!」

友里はバンとテーブルを叩いて息巻く。

「借りてるって、今日引っ越しをしてただろ?」

「その件については色々あって結局無くなったの! 契約はまだ半年残っているし、家賃も払ってるはずよ」

「自分も全然説明になってないじゃんか……。はぁー何があったか知らんが、見事なダブルブッキングだな」

中里は手の平を上げて、目をつぶる。

そしてふと何かに気付いたように眉を潜めた。

「確認しておくが、ここって『666号室』だよな?」

「そうよ」

友里は目を合わさずに言う。

「まさか……」

中里は昔、推理小説で読んだ、あるトリックを思い出していた。

「6」だと思っていたのは逆さで、実は「9」だったという――。

ゴクリと唾を飲み込み、ポケットからメモを取り出す。

「……って、やっぱ『666号室』だし!」

手書きで書かれているので、間違えようは無かった。

大体、999号室っていうのもおかしい。

「貴方がこの家の住人だって主張するなら、証拠を見せなさいよ。そうよ、鍵はどうしたの?」

友里は腰に手を当てて言う。

「鍵は無い」

「鍵は無いって……やっぱり、まさか」

「ちょ! ダメ警察! 警察はダメー!」

電話に手を伸ばそうとするのを、中里はダイビングして止める。

しばらくまた揉みくちゃになる。

「ハァハァ……もう、何で鍵持ってないのよ?」

子機を取られ、友里は思いっ切り睨みながら口を開く。

「ばぁちゃんが管理人に言って開けてもらえって。で、鍵は明日受け取りに行く予定だ」

中里もぜいぜい息を吐きながら、答える。

「じゃあ管理人さんに聞けば――」

「いや、ちょうど引っ越しの業者がいたから、エントランスはすれ違いにそのまま入ってきた。そしてこの家の玄関も、ほぼ同様だ」

「全く、じゃあそのおばあちゃんに今すぐ電話して確認しなさいよ!」

柳眉を逆立てる友里に対して、中里は肩を竦める。

「ばぁちゃんは夜7時には寝る。後は電話が鳴ろうが、槍が降ろうが、絶対に目は覚まさない。管理人さんも同様だ。今は9時前。勤務時間は朝8時から夜8時までって受付に書いてあった」

「……っ」

友里は唇を噛んでソファにドスンと座る。

「まぁでもこの紙が何よりの証拠だろ?」

中里はクイと眉を上げて紙を広げる。

紙には例の手書きの地図と、部屋番号が書かれていた。

「ものすごく適当な地図じゃない! ひょっとして別のマンションなんじゃないの?」

「いや」

そう言って中里は窓際まで跳ねていく。

「さっきこのテラスから周辺を見ていたが、それらしいマンションは無かった。横に66戸もあるマンションなんて、そうあるもんじゃない」

「だからってここがそのマンションだっていう証拠には……」

友里の言葉を遮るように、中里は言った。

「このマンションの名前は?」

「グランツモーレ佳乃子」

「だろ? 俺のばぁちゃんの名前だ」

コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://sogaken.blog110.fc2.com/tb.php/419-31c2b40e
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック