話は膠着状態になって、友里は無言のまま中里を牽制するように睨んでいた。
しばらく二人の間を沈黙が流れる。
「唐突に訊くが、彼氏はいるのか?」
「はぁ?」
文字通り唐突な問いに、友里は大きな目を一回り大きくする。
「恋人、ステディな関係、男、若い燕、スイートハートはいるのかと聞いている」
「な、何言ってるの? 何でそんなの貴方に言う必要が」
友里は明らかに機嫌が悪そうな表情になる。
「必要?」
中里は彼女の言葉を繰り返す。
「そうよ、赤の他人でしょ? 大体、もし知り合いだったとしても、立場上言えないの。事務所の問題もあるし、マスコミとか。最近はネットの掲示板で、すぐ噂になっちゃうんだから」
友里は腰に手を当てて言う。
「立場とか事務所とか意味分かんねぇ……」
中里はちゃんちゃらおかしいと首を左右に振る。
「ったく。あたしもそこそこは知られてると思ってたんだけど……」
そう独りごちて、友里は飲み物を探しにソファを立った。
その時、また藪から棒に話しが始まった。
「俺がこの家に入った時、半分だけ荷物が無くなっていた」
独り言なのだろうか、中里はテーブルをじっと見つめたまま話し続ける。
「その時は引っ越しの途中だと思ったが、今も同じ状況だ。冷蔵庫はあるのに、テレビは無い。だが明らかに配線が外された跡がある。そしてペアのソファが半分だけ残っている」
「それが……どうしたのよ」
友里は振り返って答える。
中里は顔を上げる。
「いや、おかしいと思ってたんだ。二人で住んでいて、どちらかが出て行くっていうのなら理解できる。けれど全ての荷物が梱包されているんだ。つまり、元々は二人で出て行くはずだったんだろう」
中里の言葉に、友里は無言のままだ。
「俺が思うにだが、おそらく初めは二人で出て行く予定だったんじゃないか? じゃないと、ばぁちゃんが俺にこの部屋を借す訳ないしな。けれど事情が変わって、出て行くのは一人だけになった。勿論、新しい引っ越し先は決まっていたはずだ。となると、それは二人にとって決定的な事情ってことになる」
「だ、だから一体……」
中里の回りくどい言い方に、友里はいらいらした口調で言う。
「えーっと、まぁー、つまり……ぶっちゃけて言うとだが」
中里は実に言いづらそうな表情になった。
しかし発した言葉は実にストレートだった。
「彼氏とは今日別れたのか?」
「なっ!?」
友里の表情が変わるのを、中里はじっと見つめていた。
友里は下唇を咬む。
「あーうるさいなぁ! そうよ、別れたわよっ。貴方の言うように今日ね!」
自棄になったように言って、足音を立てながら別室へ向かっていった。
一人リビングに残された中里は、頭をかきながらブツブツと独り言を言っていた。
「……となると、ヤバいことになってきたなぁ。俺は警察の次に暴力が嫌いなんだよな。痛いし。何かリュックに使えそうな物あったかな……」
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