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「最近は最近何やってるんだ?」
晃太から訊ねられる。
他の二人も啓介の方を見た。
啓介が来るまでの間に、一通り三人で近況報告はし合ったらしい。
「何って。別に相変わらずだよ」
啓介はこの手の質問が苦手だった。
「最近、24のDVDにハマっている」などと日常生活を訊かれている訳でないことは確かだ。
とすれば最近と言われても、数年前と何も変わっていなかった。
「晃太は何やってるんだ?」
突っ込まれる前に、啓介は聞き返すことにした。
「確か土木関係って聞いてたけど。自分より年上の大工さんたちをまとめてるとかなんとか」
「現場監督ね。あれはとっくにやめたよ」
「やめた?」
「ああ、あの仕事やってても先が見えたしさ」
迷いのない言葉に啓介は驚く。
啓介は先が見えなくなって、先が見たくて、今の会社に就職したのだった。
結婚して子供が生まれたりすれば、五年後十年後の自分の姿を思い描くことも出来るかもしれない。
それは入学式、卒業式といった子供の成長と共に、側にいる自分を想像して。
しかし独り身の啓介にとって、数年先の未来など全く想像がつかなかった。
決して単調な人生を求めている訳ではないが、何かよりどころとなる、指針や安定が欲しいのは確かだった。
「今は留学中でさ、イギリスで語学学校行ってる」
「へぇー」
「就学ビザは二年だから、来年には帰って来なきゃいけないんだけど。ちょうど春休みで一時帰国中」
「帰ったら元の職場に戻るのか?」
「はぁ、何言ってるんだよ。辞めたって言っただろ。とりあえずこっちで就職する予定」
「そうなんだ、どういうの考えてるんだ?」
「外資かな。オーディオとかハード系をやってみたいんだよね」
へぇーとまた相槌を打とうとすると、武広が笑った。
「ははっ、こいつ漠然としすぎだろ。さっき俺とショーグンが突っ込んで、ようやくオーディオ系とか言い出したけど」
晃太はむっとした顔をする。
「とりあえず就活しながら探していくつもりなんだよ。まだ一年あるんだし、その間に絞ってったっていいだろ」
「だから駄目だって言ってるんだよ」
将則が口を挟む。
「そういうのは普通、会社辞める前に考えておくもんだ。一体何のために留学したんだってことだ」
「それは英語を勉強しにだよ。日常会話ぐらいなら、もう普通に大丈夫だし」
「お前は昔っからそうやって無謀なんだ」
どうやら晃太は二人に責められているようだった。
三十を前にして、今更何をやっているんだ、二年間の空白は大きいというのが二人の意見だった。
それに対して晃太は逆に、今が最後のチャンスだったという。
啓介は二人の考えもよく分かったが、自分の思うように行動出来る晃太も羨ましいと思った。
ゴールが見えなくても走り出せる勇気が。
自分は今の仕事を辞めて、新しい仕事を見つけようなどと考えたこともなかった。
そればかりか、転勤して見知らぬ土地で生活するのも躊躇われるぐらいだ。
留学なんて言うまでもなかった。
拠り所が欲しい。
自分のベースとなる確実なものが欲しかった。
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