アクセス解析 カウンター SEO ドリーム愛ランド 「トモ×トラ」【第三章】
ドリーム愛ランド
日々の出来事を日記に書いていきます。
【9/18ニューオータニ19:00】
いつの間にかロビーには大勢の人が集まっていた。

20代、30代の若者であふれ、逆に先ほどまで多かったスーツ姿の人たちは殆ど見られなくなっていた。

曽我は木村と朋也に、最後の作戦をメールしてから言う。

「ザト、よく聞いてくれ」

「な、なんですか……」

中里はビクッと一歩引いて訊ねる。

「考え得る最悪の事態は?」

「チーちゃんと松本さん達が合流することですよね」

「そうだ、その通り。そしてもう時間はない」

「はい……」

「じゃあどうすればいい?」

曽我は改めて中里に問う。

そうこうしている内にも、智佐が一番入り口側にあるロビーに入ってきた。

曽我と中里は見つからないよう一歩下がる。

「チーちゃんを無理矢理引き留める? って、まさか昼間のようにやるのは、もう嫌ですよ」

「そうだ、同じ手は使えない。そして今後のこともあるから、俺らが直接チーちゃんに接触するのは無理だ」

「じゃあどうやって?」

「だからといって、松ちゃんたちに接触するのもしかり、だ。……そこで、ザトに頼みがある」

「な、なんですか……」

曽我はじっと中里を見つめて、言った。

「この非常ボタンを押してくれ」

「えっ? な、何で!? ぼ、僕がですか!? 嫌ですよ!」

「もちろん混乱させるためだ。間接的に妨害する手段は、他には思いつかなかった」

智佐は手前のロビーから出て、フロントの方に歩いてくると、鞄から携帯を取り出した。

おそらく朋也か万蔵に電話して、何処にいるのか聞こうとしているのだろう。

「だからってやり過ぎですよー! そんなことしたら、僕も只では済まないでしょうし」

「状況的に多分大丈夫だ」

「多分って!? しかも状況的って何ですか? 全然大丈夫じゃないですよーっ!」

「まーそれはいい。もし万が一捕まっても、お前は未成年だ。ちょっと我慢すればすぐに出てこれる」

「出てこれるって何処入るんですか!? い、嫌ですよっ! えっ、だからそんな顔されても……絶対、嫌ですからねーっ! あーーーーーーーーーっ!」

【9/18ニューオータニ18:55】
どうする?

どうする?

このままでは間違いなく智佐と、朋也たち三人は合流してしまう。

それは考え得る、一番最悪の事態だった。

「…………」

智佐は祥子の浮気を疑っている。

それは今朝の行動を見て、間違いないだろう。

その智佐が、朋也と祥子の様子を見て、果たして何も思わないだろうか。

二人の関係までは気付かなくても、万が一違和感を覚えてしまったら、今後智佐はどういう行動に出るだろう。

勘の鋭く、そして独占欲の強い智佐のことだから、疑問が払拭できるまで、とことん両者を突き詰めることは、想像に難くない。

だから――絶対に智佐を合流させてはならない。

じゃあどうする?

どうすれば?

朋也は万蔵と話している。

一刻も早くこの場を離れるべきだが、それも無理そうだ。

木村の状況は全く分からないし、露崎は智佐の尾行をしている。

動けるのは曽我と中里だけだった。

「…………」

けれど先ほどから胸の中を渦巻くこの違和感は何だろう――。

「何か様子がおかしくないか?」

曽我は小声で中里に尋ねる。

「そうですね……あの三人の様子だけじゃなく、何かこのロビー全体が」

「だよな」

曽我の携帯が振動する。

露崎からのメールだった。

曽我はまた一層難しい顔になって、顔を上げる。

「来ました」

中里が呟く。

二人の視線の先には、ご機嫌な様子でエントランスホールに入ってきた智佐の姿が映っていた。

【9/18ニューオータニ18:55】
――作戦は成功、したはずだった。

自分が智佐を尾行しているのは、あくまでも「念のため」であり、もう全ての問題は解決しているはずだ。

あとは智佐が、朋也と万蔵とホテルで合流するだけ。

そしてそれを見届けて、自分の仕事も終わりのはずだった。

「…………」

露崎は智佐の20メートル後方で、外堀通りを歩いている。

目的地ももう目の前で、大きなホテルの外観は露崎の位置からもはっきり見えている。

だと言うのに、先ほどから何度も皆にメールを送っているが、誰からも返信が来ない。

朋也にはそんな余裕は無いだろうが、曽我や中里、木村の仕事はとっくに終わっているはずだ。

不安になって電話も掛けてみたが、誰も繋がらない。

何か現場で不味いことでも起こったのだろうか?

「…………」

露崎は胸騒ぎを覚えたが、もう自分にはどうすることも出来ない場所まで来ていた。

智佐はニューオータニの敷地に入っていった。
【9/18メール18:55】
Message from 露崎 to 曽我・松本・木村

>今ホテルの敷地に入りました。
>誰からも返信がありませんが、中はどうなっていますか?

【9/18ニューオータニ18:50】
どういう経緯でこんな状況になっているのだろうか?

曽我と中里は死角のエレベータホールからロビーを覗きながら、目の前の光景が信じられずにいた。

万蔵が朋也と話している。

しかも隣に祥子もいる、三人で。

どうして!?

万一、万蔵と遭遇しても、朋也が他人を装って祥子と別れていれば、とりあえずこの状況は避けられるはずだ。

万蔵は朋也の顔を知らないはずだし……いや、ひょっとすると知っていたのか?

「…………」

万蔵は随分機嫌が良さそうに見える。

祥子は全く無表情でその場にいるだけだったが、朋也は万蔵の話に合わせるよう
に爽やかな笑顔で頷いたり、時には口を開いて相槌を打ったりしている。

一体、何がどうなってこうなっているのだろうか?

「…………」

しかし状況をじっくり見極めているような時間はない。

ロビーにも人の数が増えてきた。

いつの間にかサラリーマンの姿だけでなく、若者の姿もちらほらと見られるようになった。

そして智佐が来るまで、もう数分だった。